はじめに
こんにちは、アメリカ在住の税理士です。
このブログでは「アメリカで暮らす日本人のための税金情報」をわかりやすく発信しています。
今回は、「奨学金や助成金による収入が発生したFビザ留学生」のためのアメリカ税務申告についてまとめてみました。授業料に充てるなど「教育目的」の奨学金は非課税になる一方、生活費に相当する奨学金や研究補助金(stipend)が課税対象となるケースが意外と多く、注意が必要です(日本の留学支援団体や財団等からの奨学金の場合には、アメリカでの税務申告は不要です)。
この記事を読めば、初めての方でも奨学金に関連する税務申告の仕組みが理解できるようになると思いますので、ぜひ読んでいってみてください。
1. 奨学金をもらった場合でも確定申告が必要なの?
税務申告を検討するとき、最初に押さえるべきは「税務ステータス」です。
結論として、Fビザ留学生は原則として税務上 Nonresident Alien(非居住外国人) となります。
そしてこのNonresident Alienは、アメリカで得た課税対象の所得に対して税金を支払う必要があります。奨学金の場合、以下の2分類を理解すると整理しやすいです:
✅ 非課税(税金を払わなくていい)奨学金の種類
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授業料(Tuition)の支払いのために支給される奨学金
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教材費(Books)の支払いのために支給される奨学金
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学費・授業に直接必要な費用のために支給される奨学金
❌ 課税対象(税金を払わないといけない)奨学金の種類
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家賃・食費などの生活費に充てるために支給される奨学金
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研究支援金
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助教補助金
もし課税対象となる奨学金を受け取っている場合、その金額に対してアメリカでの所得税申告が必要です。また多くの場合は、学校側で自動的に課税分の源泉徴収(withholding)が行われているため、その際に払い過ぎた税金の返還(Refund)を申告することにより受領できる可能性があります。
税務コンプライアンスを怠ると、将来のビザ申請時に不利になる場合もあるため、提出漏れは避けましょう。
2. 奨学金収入があるFビザ留学生が提出すべき書類
提出する中心書類は以下の2つです。
① Form 1040-NR “U.S. Nonresident Alien Income Tax Return”
こちらは「Nonresident Alien(非居住外国人)」専用の税務申告フォームになります。Fビザ留学生の中でも課税対象の奨学金や研究手当がある場合、必ず提出します。ちなみに、毎年3月15日までに学校からForm 1042-Sという書類を受け取ることになります。これに課税対象額が反映されていますので、こちらの情報をもとにForm 1040-NRを準備することになります。なお、申告の際にはForm 1040-NRと一緒に1042-S を添付する必要がありますので、紛失しないように注意してください。
② Form 8843 “Statement for Exempt Individuals and Individuals with a Medical Condition”
こちらは「私はFビザの学生として滞在しています」 という情報をIRS(日本でいう国税庁)に届け出るフォームになります。こちらは全てのFビザ留学生が提出する必要があります。
こちらのフォームについては、下記の記事内で作成方法から提出方法まで具体的に書いていますので、ぜひ参考にしてみてください。
3. いつまでに提出すれば良い?提出期限の延長は可能?
Form 1040-NRおよびForm 8843は翌年4月15日までに提出する必要があります。具体例でいえば、2024年1月1日から2024年12月31日の期間の申告については、2025年4月15日までに提出する必要があるということになります。
もし申告期限を延長したい場合、Form 4868(”Application for Automatic Extension of Time to File U.S. Individual Income Tax Return”)を提出すれば申告期限を6ヶ月先まで延長することが可能です。先ほどの具体例で言うと、2025年10月15日まで延長することができます。
ただし、税金を支払う期限は延長されない点に注意が必要です。このForm 4868はあくまで税務申告書(今回だとForm 1040-NRとForm 8843)の提出期限の延長だけに適用され、もし仮にForm 100-NRの計算結果として税金を支払う必要が出てきた場合、この税金はあくまで翌年4月15日(先ほどの具体例だと2025年4年15日)までに支払う必要があると言うことになります。
延長する場合の手続きについては以下にまとめていますので、ぜひ読んでいってみてください。
4. Form 1040-NRとForm 8843の作成方法
Form 1040-NRは(会計士や税理士の方でない限り)基本的には有料ツールを使うことになるかと思います。
個人的にはSprintaxがおすすめです。Sprintaxは「Nonresident(非居住)」向けの唯一の(?)タックスリターン作成ツールとなっていて、Form 1040-NRとForm 8843を同時に電子申告することが可能です。基本的にSprintax内のインストラクションに従えば簡単に提出するまで完了することが可能ですが、以下におおまかな手順を記載しておきます。
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まず奨学金の支払い元(大学等)からForm 1042-Sを受け取る
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4月15日までにSprintaxへ必要事項とForm 1042-Sの情報を入力。
- もし税金の支払いが必要な場合、「Tax Due Amount you owned」と表示されるので、指定の方法で支払いを行う。
- もしRefund(過払金の戻り)があると表示された場合は、インストラクションに従って入金する銀行口座情報を入力する。
5. 有料ツールのコストと比較
必要事項を入力するだけで自動で作成してくれるソフトがいくつかありますので、ご紹介したいと思います。
選択肢 1: sprintax(スプリンタックス)
タックスリターンの作成ソフトウェアの中では珍しい「非居住者向け」の税務申告に焦点を当てているソフトウェアです。創業者も元々は留学生で、留学生や税務上の「非居住者」向けのタックスリターン生成ソフトがないことに目をつけ起業したという、同じ留学生出身としてはなんとも応援したくなる企業です。
そんなことはさておき、気になるお値段は連邦税のフォームは$54.95、州税のフォームは$49.95となっています。州にもよるのですが、例えばカリフォルニア州をはじめとする殆どの州では州税の申告も必要になってきます。この記事で紹介するForm 1040-NRとForm 8843はあくまで「連邦税」の申告用フォームですので、州税についてはお住まいの州に合わせて州独自のタックスリターンを作成する必要があります。
本記事では州独自のフォームに関する説明は省きますが、Sprintaxに必要事項を記入して出力された州税用の申告フォームを提出していれば基本的に問題ありませんので、ご安心ください。また、Sprintaxでは州税の申告フォームは電子申告することができず、わざわざ郵送する必要がありますので、ご注意ください。
なお、Form 1040-NRとForm 8843についてはSprintax内から電子申告することが可能です。
郵送については以下に詳しくまとめていますので、よければ読んでいってください。
なお、料金は変わる可能性がありますので、念のため公式サイトの料金表に飛べるリンクを貼っておきます。最新情報はこちらをご覧ください。
選択肢 2: Glacier Tax Prep
フォームの種類によらず一律$49という値段設定をしている、一風変わったソフトウェアです。超主観ですが、サイトのUIがあまりイケてないので、少し不安になります(とはいえ使ったことがないので、品質は存じ上げません!)。さらにはこのソフトウェアは連邦税にしか対応していないため、州税については別のシステムを使うか自分で作成する必要があります。そのため、お値段は多少高くなりますが、州税の申告書作成まで完了できるSprintaxを使う方が圧倒的に楽だと思います。
6. よくある質問:
日本でのバイト収入や日本で受け取る奨学金はアメリカで申告する必要がある?
原則として不要です。Fビザ留学生の場合、(最初の5年間は)アメリカ国外で得た収入について米国税務申告に日本で得た収入を含める必要はありません。そのため、日本で得たバイト収入や、日本の奨学金、給付型支援金についてはアメリカ側での申告は不要です。
Form 1042-Sって何?
大学やその他団体から奨学金・研究補助金が支給された場合に発行される書類です。奨学金を受け取った場合、毎年3月15日までに奨学金の支払い元からForm 1042-Sを受け取ることになります。これには課税対象額が反映されており、こちらの情報をもとにForm 1040-NRを準備することになります。なお、申告の際にはForm 1040-NRと一緒に1042-S を添付する必要がありますので、紛失しないように注意してください。
3月15日を過ぎても送られてこない場合、大学のPayroll/Financeオフィスに問い合わせましょう。
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
奨学金というと、実際に働いて得た収入ではないため「税金がかからない」と誤解しがちですが、生活費や研究補助金は課税対象になることが多く、毎年ちゃんと対応する必要があります。
このブログでは引き続き、アメリカ在住日本人のための税金情報をわかりやすく発信していきます。
読んでいただき、ありがとうございました。